◆2017年7月16日 
「雨月物語」(講談社学術文庫)
上田秋成/青木正次訳注

怖いと聞いてはいましたが、初めて「雨月物語」を読みました。
「白峯」「菊花の約」「浅茅が宿」など、怪異譚9編で構成されています。

しとしとと降り始める雨、急に顔を出す月。これらを合図に突然、日常が非日常へと姿を変える瞬間。
風流心、好き心といった、人間のふとした心の働きが異界と呼応してしまう。
平安・鎌倉の説話文学とも違う感じで、冷たく澄んだ文章が、時折ぐっと人間心理の内奥に迫るのが、むしろ近現代文学を思わせる。
一方で、現代人の価値観では理解不能な話や、落ちもない話があったりして。
どの話も全然予定調和でないので、先の展開が予想できず、読んでいてどきどきします。
(2017年30冊目)