○2017年8月
「祈りのかたち 仏教美術入門」(出光美術館)

出光美術館といえば、東洋の陶磁器や仙がい、ルオー、また中世から江戸期の絵画、というイメージが強いですが、今展では所蔵の仏教美術を展示しています。
一部を除いて、初めて見るものが多かったです。

初めに目に入るのは「絵因果経」。絵柄は素朴で、奈良絵を彷彿とさせます。
開かれているのは、魔王が釈迦の成道を妨害しようとしている場面。菩薩の慈悲力(と書いてあった)が発揮される様子が描かれています。
魔王がけしかける軍団の中に、宗達の「風神雷神図」とほぼ同じ姿の風神・雷神がいて、このイメージは奈良時代からほとんど変わらないのだなあと感心しました。
宗達は、三十三間堂の風神雷神像をモデルに描いたと言われていますが、二十八部衆の眷属となる前は中央アジアの悪神、ここにいても不思議はない。でも他に「火の神?」と思える存在なども見えるんですよね。
風、雷、火、水…人を怖れさせる自然神たちのグループがあったことが想像されました。

中将姫が蓮糸で織ったという伝説で有名な「当麻曼荼羅図」の写本。
阿弥陀の極楽浄土の景色と、観無量寿経の序文説話や十六観想を描いたもの。この解説が詳細で、興味深かったです。 
一方では、「十王地獄図」「六道十王図」などに、これも細かい説明がついています。
多くの日本人が思い浮かべる天国や地獄のイメージが、中世以前に作られたこういう絵画から来ており、しかもほとんど変わらぬ形で現在まで継承されていると思うと、何やら不思議な気がします。
他にも仏像・仏画や密教の法具、それに一休や仙がいの禅宗書画が多く展示されていましたが、展示室内の冷房が効きすぎて寒くて。外は真夏の暑さだというのに…。
後に行くに従い早足になって、後半はかなり見飛ばしました。