○2017年9月24日
「江戸の琳派芸術」(出光美術館)

交通会館の帰りに出光美術館に寄りました。
江戸琳派っていうと抱一中心だし、そんなに好きではないしなーと、大して期待しないで見たのですが、結構面白かったです。

抱一の光琳へのオマージュ「風神雷神図屏風」や「八ツ橋図屏風」は有名ですが、見たことがない絵もたくさんありました。
江戸琳派というと、私は細見美術館や静嘉堂文庫が浮かびますが、出光美術館にも抱一や其一の優品は多いのですね。
中でも抱一の「夏秋草図屏風草稿」というのは珍しいと思いました。あの「夏秋草図屏風」の下描きです。何よりも、よくこんなものが残っていたもんだと。
二つの「紅白梅図屏風」が並んでいました。
伝光琳の紅白梅図(上の写真、部分)は、MOAの紅白梅図のように行儀良く画面に収まらない自由奔放さと、光琳らしい艶やかさが共存しています。右隻の大きな空白が余りに大胆で、見ていて心が躍ります。
もう一つは抱一で、お得意の銀地にぼってりとした美しさ。梅の静的な気品が表現されています。夜の梅ですね。
あくまで華やかな色気たっぷりの光琳と、文字通りいぶし銀のような渋さを表現する抱一。こうしてみると二人の方向性はどうも違うような気がしてくるのですが…。

「我等迄流れを汲むや苔清水」という句を詠んだりと、光琳顕彰に努めた抱一ですが、光琳オマージュにひと工夫加えていることを解説で初めて知りました。
光琳「八ツ橋図屏風」に倣うのに、光琳が燕子花を約130輪描き込んでいるのに対し、抱一は約80輪に減らしていること、抱一の下地は絹本の上に金箔を敷いていること。
確かに、紙に金箔を張った時のがさがさした感じでなく、絹本の滑らかな質感が見て取れました。
展示では、琳派を結ぶ花として、伝光琳、伝乾山、抱一、其一の立葵図を並べているのが面白かったです。立葵、紅白梅、燕子花、秋草等というのは、琳派共通のモチーフですね。
こうして光琳、抱一、其一を比べてみると、必ずしも光琳→抱一→其一という流れではないことに気付かされます。
其一は、師匠の抱一以上に光琳への傾倒ぶりが窺える気がします。
光琳の華やかさを江戸風に瀟洒にアレンジし直したのが抱一なら、其一は、光琳の華やかさ、艶やかさを追求した結果、色彩やモチーフがぶつかり合って、一種のえぐみにまで到達してしまった感じ。
今展展示の抱一「青楓朱楓図屏風」は、其一の手が入っている可能性が指摘されているとのことですが、この作品の造形感覚は、其一の代表作とされる「夏秋渓流図屏風」とやはり共通する部分が多いと感じられました。