FullSizeRender
◆2018年2月5日
「つぼみ」(光文社)
宮下奈都

この中の3編は他の作品のスピンオフということですが、私はそちらは読んでいません。でも、ここから読んでも十分味わいのある本でした。

一番気に入ったのは「まだまだ、」です。華道に向き合う主人公紗英の葛藤が描かれています。
基本の型から逃れて自由に、自分自身の花を活けてみたいと願う紗英。そんな彼女に祖母がかけた言葉。「型があるから自由になれる」「型があんたを助けてくれるんだよ」
これは華道に限ったことではなく、生き方そのものへの示唆なのでしょう。思えば青年期とは、いろんな人生の「型」を学ぶ時期なのかも。

この後の紗英の教師に対する行動には、確かにある種のふっきれたものがあります。摩擦を怖れない心棒のような何か。
いろんなときに、ふっと心を通り過ぎて、それきり忘れてしまうような気持ちを著者は上手に掬い上げます。表題の「まだまだ」のあとの「、」は、このお話のあとに今はまだ空白だけれど、彼女の未来が広がっていることを感じさせました。
このような、将来あるべき姿へ向かう途上の主人公たちがこの本には多く描かれています。清々しい印象を受けました。
(2018年3冊目)☆☆