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○2018年3月
「ブリューゲル展 画家一族150年の系譜」(東京都美術館)

オランダ絵画、フランドル絵画の展覧会にいくと、必ずと言っていいほど出てくるブリューゲルの名前。でも私にはやたらにいる(ように思える)ブリューゲルさんの区別が、いつもつかなかったのでした。

整理します。
まず、最初の人がピーテル・ブリューゲル1世(以下、簡便に父ブリューゲルと呼びます)。
その子供、兄のピーテル・ブリューゲル2世(以下、兄)、弟がヤン・ブリューゲル1世(以下、弟)。
弟ブリューゲルの息子、ヤン・ブリューゲル2世(以下、孫兄)。その弟がアンプロシウス・ブリューゲル(孫弟)
孫兄ブリューゲルの息子がアブラハム・ブリューゲル、甥がヤン・ファン・ケッセル1世。この二人は父ブリューゲルから見るとひ孫に当たります。

並べてみるだけでも飽きてきますが、これでも有名人だけ。一族郎党の中で画家になった人は他にもたくさんいるので、覚えるのなんて到底不可能なのです。
ここで私たちが思い出すのは狩野派です。
狩野派も、初代正信から始まって、長い期間存続する巨大同族カンパニーを作り上げました。永徳や探幽といった天才をしばしば輩出し、流派を革新し続けることにより時代をリードしました。
狩野派が画業の傍ら工房運営、画風の整理とブランド化、粉本の活用によるクオリティコントロールなど、経営努力に怠りなかったのは言うまでもありません。
ブリューゲル一族間の関係がどのようなものだったかは分かりませんが、兄ブリューゲルは父ブリューゲルのコピーに徹する一方、弟ブリューゲルは花や城塞が得意といったふうに、画技や画風に応じて、一族で作品制作を分担していたのかも、と思えます。
あるいは、兄弟の経済状態はかなり違ったとも聞きますから、別の家を立てると全く無関係だったのかも知れませんが。
画風を継承していく中でオリジナルをトレースしたりもしていて、芸術家である一方で職人的集団制作のあり方が、やはり狩野派ぽいです。

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今展のポスターにもなっている兄ブリューゲルの「野外での婚礼の踊り」。見れば見るほど奇妙な絵です。
奥の方に描かれた、頭にショールを被ってない女性が新婦。では新郎はどこに?
フランドル地方はスペイン領だったから、カトリックでなければ結婚の許可が下りなかったと別のところで聞きました。他にも、婚礼の客の数を限定したりという縛りがあったそうです。
この婚礼に新郎が描かれなかったのは、プロテスタントとカトリックの結婚ということなのでしょうか。お客たちは新郎の不在などどこ吹く風で楽しげに見えるのですが。
でも、何よりも気になるのは、男たちが付けているコッドピースかも…。

孫兄ブリューゲルや孫弟ブリューゲル(なんかややこしくなってきた。笑)の描いた寓意画が面白かったです。
聴覚や嗅覚、愛や、四大元素と呼ばれた大地、水、大気、火を事物に託して描いています。たとえば聴覚だったら楽器や、耳がいいとされる鹿を絵の中に所狭しと詰め込むのです。
フランドル絵画というと寓意画、というイメージさえ私は持ちますが、今展では寓意の解説が極端に少ないのが不満です。
タイトルは忘れましたが、へべれけの農民とお酒をたしなむ程度の農民を対比している絵で、前者の前には煙の出ているパイプが落ちている、というのがありました。酒浸りの悪徳とむなしさを暗喩してるんだと思いますが、こういうのは最低限、説明をして欲しいです。
下の写真は絵葉書より。
「聴覚の寓意」と「鳥罠」。
「鳥罠」は、鳥罠と同じでスケートしてる人たちも一歩間違えると氷の下に転落だぞ、という教訓だか寓意。皮肉が効いています。
私にとってフランドル絵画の魅力は、絵解きの面白さです。
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