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○2018年3月
「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」(国立西洋美術館)

国立西洋美術館に「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」を見に行きました。
ベラスケスら、バロックなどの17世紀絵画中心に展示しています。
カトリック復興と密接に結び付いた宗教画は、重厚かつ劇的。さらにスペイン独特のものも感じさせて面白いです。

始めのほうのコーナーに、キリストを「聖衣に超自然的な自画像を残した芸術家」とみなし、父なる神が絵筆を握って「無原罪の聖母」を描いている絵や、十字架上のイエスと画家を対比的に描いた絵があり、とても興味深かったです。こんな絵、これまで見たことないと思います。
絵とは、芸術とは何か?職人と何が違うのか?
スペインの画家たちはまず自分が拠って立つ場所を定めようとしたのでしょうか。
さらに「聖ベルナルドゥスと聖母」では聖人の祈りに応じて聖母マリアの彫像が乳を迸らせる絵があります、ぎょっとする絵ではありますが、これも神と芸術の関係を示唆しているのでしょう。

国王フェリペ4世の頃に宮廷画家として仕えたベラスケスは特筆すべき存在です。
ベラスケスの絵は、まさに動き出しそうなぐらい迫真に迫っており、人間の個性、リアリズムを描き出しています。新しい絵画の時代の幕開き、という感じです。
それまでの絵と比べ、明らかに表情が違うのですよね。どこか遠い世界の絵ではなく、私たちにも理解できそうな人間的な表情が表されている。あ、こんな人いるいる、という感じなのです。
「東方三博士の礼拝」では、ベラスケスは自分の家族をモデルに聖母子と博士を描いたそうです。幼い娘がモデルという幼子イエスの表情が生き生きとしています。
同じコーナーには、ベラスケスによって修道院を飾る絵として選ばれたというルーベンスの「聖アンナのいる聖家族」もあります。この聖母マリアも美しいだけでなく個性の輝きがあります。
現代人にとってだけでなく、中世の人達にとっても、こういう絵が魅力的で親しみやすかったということなのでしょう。

常設展示では、新収蔵のシャセリオー「アクタイオンに驚くディアナ」、モリゾ「黒いドレスの女性」、コラン「楽」「詩」などが見られました。
モネの朝の積みわらの絵。朝のピンク色の光が積みわらを照らしている絵で、素敵でした。
浮世絵にならったのか思い切って対象を平面的に展開したボナール「坐る娘と兎」が、この画家の絵の中でも魅力的で、この機会にばっちり写真に収めました。