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◆2018年6月2日
「おまじない」(筑摩書房)
西加奈子

悩みを抱えている時にさり気なくかけられる言葉。
かける方はそこまで意識していなくても、ふとした言葉で流れが変わって救われることはある。そう、おまじないのように。
そんなお話を集めた短編集。

一番心に残ったのは「孫係」でしょうか。
大なり小なり、社会に迎合して生きている私たち。ところが本心を隠して周りに合わせることは疲れるし、人を自己嫌悪に陥らせる。
嬉しくないのに笑う。親に心配かけたくないために元気に振舞う。そして一人になると思わずため息。
そんな時に主人公にかけられたのが「係だと思いましょう」という祖父の言葉でした。
友達、子供、孫。係と割り切って役割を演じれば、辛くないはず。そもそも他者への優しさゆえに生じたストレスなんだから。それに、この種の悩みを抱えているのが自分だけではないこと、それを人生の先輩である祖父と共有できることが、彼女の気持ちを明るくしたということでしょうね。

著者の作品というと長編のイメージが強いけれど、シチュエーションが絞り込まれ、テーマがはっきりしているので、短編でもぐいぐい響いてきます。
本作は「言葉」が重要なキーワードとなっているところがいいと思います。なにしろ小説は言葉であるし、人の社会は言葉によって成り立っているので。
さり気ない日常感覚の中に、言葉の力が表現された本だと思います。
(2018年12冊目)