FullSizeRender
○2018年6月
「宋磁 ―神秘のやきもの」(出光美術館)
先日終わった出光美術館の「宋磁」展には3回行きました。
青磁、白磁がほとんどで、そこに青白磁、わずかに天目茶碗や色絵磁器が混じる程度で、やはり宋時代というと青磁白磁の時代なのだなという感じがします。
定窯の白磁、磁州窯の掻き落とし、耀州窯のオリーブグリーンと印花文、鈞窯の澱青釉や月白釉、紫紅斑、景徳鎮の白磁と見紛うような青白磁と刻花文、影青、そして砧青磁などの竜泉窯や南宋官窯と、それぞれの特色が出ています。
なかでも北宋・鈞窯の澱青釉は、汝官窯へのつながりなどが言われるだけあって印象深かったです。
汝窯は去年春に、大阪の東洋陶磁美術館に水仙盆を見に行きました。専門的なことは分かりませんが、美しい「雨過天晴」のやきものが、後の世に至るまで憧れの対象だったことは理解できました。
今展に出ている鈞窯の「青磁盤」は、やや暗い色味に感じますが、汝窯の可能性が指摘されているということでした。

磁州窯系では、異なる種類の鉄釉を掛け分けたものが、室町以降に日本で珍重された茶入の景色を思い起こさせ、案外影響関係があるのかもと思いました。
今回一番の収穫は越州窯の秘色について。
宇治で出土した、藤原北家の遺品と思われる朽葉色の水注が展示されているのですが、これが余りに普通の青磁の色とかけ離れていて。これが秘色というもの?と疑問に思いました。
わが国では平安期の源氏物語や宇津保物語に記事が出てきますが、秘色というとこの色の器を指していたようです。
一方、秘色磁器は色のことを指すのではなく、天子以外に使用が禁じられた器、という意味ともいわれます。
出光美術館には、奥の陶片室に中国の法門寺遺跡出土の、これこそ秘色という陶片があります。しげしげと見てみると、石のような硬質の感じのする暗いブルーグレイで、日本人が秘色青磁とみなしたものとは違うことがわかります。
この間からの疑問に、答えが見つかって良かったです。