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●2018年6月7日
ミュージカル「モーツァルト!」(帝国劇場)
出演:古川雄大 市村正親 和音美桜 生田絵梨花 山口祐一郎 涼風真世 阿知波悟美 武岡淳一 遠山裕介

帝劇で「モーツァルト!」を観ました。
新演出ということで心配しましたが、そんなに気になるほどのこともなくてひと安心。舞台上に巨大なピアノのオブジェが出現し、その上で芝居が進行します。
このほか盆が多用されてたり、衣装とかも結構変わりました。

この日のキャストは、古川ヴォルフ、生田コンスタンツェ、男爵夫人は涼風真世。
古川ヴォルフは上背があり顔がいいのでビジュアルに期待しておりました。ところが衣装がいま風のだらっとしたのが多くて、あまり似合っていないのでは?と思いました。
演技については、まだまだ発展途上にある感じ。明るさと沈鬱さのバランスが重要だと思うのですが、表情一つとってもへらへらしているか悩んでいるか、どちらかに見えてしまい、その奥にあるものが伝わってこないのです。
そのため、彼の分身であり、才能や過去の栄光を象徴していると思われるアマデが、舞台上で置き去りにされているように見えることがありました。
とはいえ難曲揃いの歌をあそこまで歌えてたのは立派だと思うし、ごくたまに無造作に顔を出すパッションがいいと感じました。エリザベートやモーツァルト!のような悲劇が似合う人だと思うので、今後に期待したいです。

生田コンスタンツェは「ダンスはやめられない」などが良かったです。演じる人によって印象の変わる役ですが、健気な感じのコンスタンツェでした。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人役の涼風真世は素晴らしいのひとこと。
涼風さんが出てきて「おとぎ話をしましょう」というところからすでにドキドキ。「星から降る金」が始まると、上手いとかそういう言葉を超えて、劇的な空間が広がります。
ほぼ中央前方席だったのですが、涼風さんが歌うにつれて市村パパの表情が翳っていき、それを察したナンネールがそっと寄り添い、そこにヴォルフが近付いていくというのが、視界の中で濃縮されたドラマのように感じられました。
ナンネール役は和音美桜。歌は抜群に上手いのですが、さらさら流れていくような感じ。前回公演の花總まりさんの時はいちいちナンネールの心情に引っかかってしまい、結果、家族の絆について考えさせられましたが、今回は良くも悪くも流れの中に綺麗に収まった感じです。
コロレド大司教は山口祐一郎さんで、どの場面も華やか。赤や黒のお衣装もお似合いです。
馬車の場面がだいぶん変わりました。まず本当に馬車らしくなり、それはいいのですが、「ア、アルコー…」という例の場面がなくなってしまい、馬に餌だか水だかを与える時間が挟まるだけ。あれ面白かったんですけどね。
恒例の客席(沿道?)へのお手振りもあったし、山口さんとアルコ役の武岡さんが馬車に揺られてつんのめったりもしてるのは、やはり可笑しい。山口さんの歌は相変わらず健在で、嬉しかったです。

「モーツァルト!」というとやはり楽曲の魅力が大きくて、歌だけだと一番好きな演目かもと改めて思いました。ざっと並べただけでも「奇跡の子」「僕こそ音楽」「残酷な人生」「星から降る金」「ダンスはやめられない」「ここはウィーン」「影を逃れて」…。
さらに、ところどころに本物のモーツァルトの楽曲が使われてて厚みが増しています。今期一度しか観られないのは残念ですが、「モーツァルト!」しっかりと堪能しました。