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◯2018年9月
「没後50年 藤田嗣治展」(東京都美術館)

藤田嗣治展に行きました。
何年か前に展覧会でフジタの絵を見て、ああ綺麗だな、と思ったのが実質的な最初の出会いです。(それまではそんなでもなかったのですが笑)
他の多くの人と同じように、あの乳白色の白に惹かれます。
これ、下地に和光堂のベビーパウダーを使ってるのですよね。このことも、その時初めて知りました。

今展では、その乳白色の人物像の展示は思ったほどは多くなく、その点では少し残念ではありました。
それでもタピスリーなどの装飾布を背景として1920年代頃に描かれた人物像には、穏やかな気品が感じられます。
この頃のフジタの人物像は、後のややどぎつさが感じられる色合いや、グレーの陰翳なども強くなく、ふわりと軽みのある美しさで心惹かれます。

人物画以外にも風景画、戦争画、宗教画、それから子供を扱ったシリーズなど多彩です。
フジタの残した言葉。
「私は世界に日本人として生きたいと思う」。
東京美術学校時代に黒田清輝とそりが合わず、フランスに渡り、パリで華々しく活躍。しかし母国日本では画業が認められず、やがて帰国したものの戦時中に戦争画を描いたことで、戦後糾弾される。やがて再びフランスに戻って洗礼を受け、その地で没する。
今展はフジタの人生の旅路について考えさせられる展覧会でもあります。
今から100年も前に日本を飛び出した画家の一軒華やかな人生の裏に、アイデンティティと現実の相剋のようなものを感じてしまうのです。