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◆2018年11月24日
「沈黙のパレード」(文藝春秋)
東野圭吾

物理学者・湯川が活躍するガリレオシリーズの新作です。
このシリーズだとやっぱり「容疑者xの献身」が傑作だと思いますが、「真夏の方程式」も好きでした。
正直、この2作に比べると私的には今ひとつの印象を持ちました。

行方不明になった若い女性が遺体で発見され、容疑者が浮上します。その容疑者はかつて草薙が担当した別の事件で限りなくクロに近いながらも証拠不十分で無罪に。
今回もひたすら黙秘を続ける男に町の人々の義憤は高まります。そして町の祭りの日、ある事件が…。

事件が陰惨で、遺族や彼女を愛した人々のことが事細かに描写されるだけに、読む方も暗い気持ちになってきます。
かといってつまらないわけではもちろんなく、それなりには読まされるんですけどね!でもそれは、湯川のキャラクターにずいぶん救われてという印象が強いです。
「容疑者x」ではラストシーンの慟哭に感動したし、「真夏」では少年との交流が胸に残りました。人間っていいものだな、という感想を湯川が媒介になって引き出していたんだと思います。
でもこの作品では、湯川のキャラをもってしても感動まで持っていけない気持ち悪さがあるんですよねえ。人間の負の部分の方がクローズアップされていて。
そういうわけで、このシリーズにしては期待ほどではなかったかな、と思わされました。
(2018年22冊目) ★