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○2019年11月
「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」(bunkamuraザ・ミュージアム)

リヒテンシュタイン家は、ハプスブルク家の重臣の家柄で、家名がそのまま現在も国名になっている珍しい国です。
展覧会では、ヨーロッパ貴族の生活をうかがわせる絵画と、当時流行していた東洋陶磁器、またそれにインスパイアされたヨーロッパ製陶磁器が並んでいます。

入ってまず目を引くのは肖像画。とりわけロスランという人の描いたリヒテンシュタイン候フランツ・ヨーゼフ1世、8歳の肖像。金髪の超美形。ポスターにもなっています。
宗教画、歴史画のコーナーでは、クラーナハ、ルーベンスらのビッグネームが登場。傾向としては多くがアカデミックな作品で、貴族のコレクションらしさが漂います。
グイド・レーニの「マグダラのマリア」はカラヴァッジョ風の明暗対比が印象的。驚いたように上を見上げる視線がこの画家独特のものですね。レーニは西洋美術館に「ルクレティア」がありますね。

この辺りから陶磁器コレクションになるのですが、ヨーロッパの貴族の陶磁器蒐集はそれこそ筋金入りなので、各時代の景徳鎮や柿右衛門などの有田、チャイニーズイマリに至るまで、これでもかというぐらい出てきます。
印象的なのは、あちらでは磁器に金属の装飾を付けてしまうところ。これは日本人にはない発想ですね。
東洋の陶磁器に憧れを抱いた彼らは、マイセン窯やウィーン窯を作り、自前の磁器制作を始めます。ウィーン窯では絵付けの原画に画家を用いたりして、芸術志向の高さをうかがわせます。
展示には、草創期のデュパキエ時代からロココ時代、ゾルゲンタール時代の磁器が並んでいます。現在のアウガルテンに直結する「ウィーンの薔薇」文様がすでに見られます。
彼らの陶磁器愛はとても深いようで、静物画にも、銀器などに混じって東洋陶磁器を描いたものが多くありました。

静物画ではとにかく花や果物を描いたものが多いのですが、「倒れた銀器のある豪華な静物」には?となりました。オランダとかの絵画なら、富の象徴?ヴァニタス?などと考えるところですが、この場合はどうでしょうか。だいたい何故銀器を倒してしまうのか、というのも興味深いところです。
ラストのコーナー、花の絵のところは撮影可だったのでいくつか写真を撮りました。ヨーロッパの古い歴史を感じさせる展覧会でした。