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○2021年9月10日
「聖林寺十一面観音 三輪山信仰のみほとけ」(東京国立博物館)

白洲正子が初めてこの観音像を見たときのことを書いています。
「さしこんで来るほのかな光の中に、浮び出た観音の姿を私は忘れることが出来ない。それは今この世に生れ出たという感じに、ゆらめきながら現れたのであった。(中略)世の中にこんな美しいものがあるのかと、私はただ茫然とみとれていた」

東京国立博物館に初めてこの仏像がお出ましになり、見に行きました。会期終了間近だったためか意外と混雑していて、気を使いながらの訪問でした。
観音像は三輪山のパネル、三つ鳥居を背景に、会場の中央に立っています。
厳しい顔付き、思っていたよりも大きく(2メートルぐらい)、意外と肉付きもあり、それでいて均整の取れた姿です。乾漆像らしい繊細な造形です。
優れた仏像は、人が作ったものという感じが全くしません。どこから見ても欠けているところがないように思われます。
十一面観音像はもともと大神神社の神宮寺である大御輪寺にあったもので、明治の神仏分離令で聖林寺に移されたということです。
また、大御輪寺にあったという諸仏、法隆寺の地蔵菩薩立像、正暦寺の日光・月光両菩薩立像が今回この会場で再会を果たしています。

三輪山の古代祭祀遺跡の出土品である勾玉や祭祀具の盾等が展示されていました。
古代のアニミズムと神仏習合の仏像。一見別々に感じられますが、実は今に至る三輪山信仰に連綿とつながっていることが感じられました。