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〇宝塚雪組公演
ミュージカル「CITY HUNTER-盗まれたXYZ-」/ショー・オルケスタ「Fire Fever」(東京宝塚劇場)
出演:彩風咲奈 朝月希和 朝美絢 綾凰華 縣千 ほか
   
新トップ就任の彩風咲奈、朝月希和、新生雪組による公演を観に行きました。
雪組は本当に久しぶりで、「壬生義士伝」以来でした。
(以下やや辛口です。この作品のファンの方はご注意ください)

「CITY HUNTER」は齋藤吉正脚本・演出。私は原作もアニメも見たことがありません。
この作品、齋藤作品の常で雑駁さとレトロ感がないまぜになっています。
「満点星大夜總会」のようにそれがよいほうに出ればいいのですが、今回は役名多過ぎ、ストーリーは散らかりまくってごちゃごちゃ、雰囲気は昭和感覚丸出しで、彩風咲奈のスタイリッシュな魅力が生かされていないと感じました。
なかでも特に違和感を感じたのは、主人公のセクハラまがいの行動、セリフがそのまま舞台上で演じられていること。
先だっての五輪のごたごたを見るまでもなく、こういうのやめようよという社会的な合意形成がされつつある令和の時代に、この感覚はどうなのでしょうか。しかも団員である生徒は女性だけ、ファンの多くも女性という劇団です。

それ以外にも巨大なトンカチのギャグとか、「鶴田浩二も高倉健もいなかった」というセリフ、こういうのも今の時代に受け入れられるのかなと心配になりました。あえての昭和のアナログ感なのかもとも思えるけれど、せっかくこの高名な原作を舞台化するなら、私は今の時代に置き換えて違和感のない話にしてほしかったです。
登場人物の後ろに流れるVTRもよくわからなかったです。漫画を意識したのかとも思ったけれど、吹出しもコマ割りもないし、生徒が目の前にいるのに気が散りました。

主人公役の彩風咲奈はとにかく足が長くて格好良かったです。ラフな着こなしも似合っていたのはさすがでした。ただ、彼女持ち前のおっとりした明るさが役柄と今一つ合っていないかなという感じがしました。
朝月希和はラストのくだりで揺れ動く思いを表現すること以外にこれといった見せ場がなくて残念。それに役柄で仕方がないとはいえ娘トップが最初から最後までジーンズなんて…と思いました。
そんな中で私が一番インパクトを受けたのは海坊主です。こんなマッチョ系の男を、一体どういうふうに工夫したのかわかりませんが、あんなに細い縣千が演じてて違和感を感じさせないところはすごいですね。
過去にも「るろうに剣心」で凪様が演じた武田観柳とか、「神々の土地」で愛月ひかるさんが演じたラスプーチンとか、全く予測不可能な変身ぶりに思わずファンになりましたが、見た目で負けていなかったです。
朝美絢のミック・エンジェルは颯爽としています。途中の裏切り、ラストの転換など、心情的な描写もうまくいっていると感じました。
国際犯罪組織ユニオン・テオーペの二人、久城あす他劔会の面々、槇村役の綾凰華、息子君役の彩海せらも好演です。なかでも夏美ようさんの年輪を感じさせる演技、真那春人さんのコスプレ的美しさは印象的でした。

ショーは稲葉大地作「Fire Fever」。
明快で爽やか、トップ就任公演らしいショーだったと思います。
彩風さんはパステルっぽい衣装がよく似合います。スタイルの良さが抜群なので、見ていて楽しくなります。朝月さんも芝居とはがらりと変わったドレス姿で、デュエットダンスも綺麗でした。
幕開きすぐの朝美絢が娘役に囲まれるシーンで、娘役さんたちが華やかで癒されました。
前方席だったので、銀橋を走り抜けていくジェンヌさんたちが間近に見られて眼福でした。
今公演の千秋楽で沙月愛奈さんが退団されますが、ダンスを目に焼き付けました。

終演後、彩風さんの挨拶がありました。「まだ少し緊張を強いられる中でのご観劇、皆さまの拍手と笑顔が一同の活力です。私たちの舞台で笑顔になっていただけると嬉しい」みたいな内容(おぼろげですが)でした。新生雪組、これからも応援したいです。