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〇2022年4月
「大英博物館 北斎ー国内の肉筆画の名品とともにー」(サントリー美術館)

大英博物館のコレクションはとにかく状態のいいものが多くて、コレクターたちに大事にされてきたことが理解できます。
北斎の作品については毎年のようにいろんな切り口でさまざまな展覧会が開かれますが、絵が抜群にうまい人、という以外にいまだに私は北斎の全貌が掴めないでいます。

「百人一首姥が絵解き」という面白い一群がありました。
もともと100枚組で企画された(当たり前ですよね笑)が、不評だったらしく27枚しか完成を見たものはない、というシリーズです。内容は姥が子供に、百人一首を絵で説明してみせる、というものですが、はっきり言って元の歌よりも難解になっているのが多いです。
たとえば「あしびきの」の人麻呂の歌は、網を引く漁師と長々しくたなびく焚火の煙、その先の苫屋で外を眺めている人が描かれています。このように歌意を江戸時代に置き直しているものと、当時の情景をそのまま描いたものもあったりして統一感にも欠けているようです。
こういう企画は北斎の知識人的な一面を表しているような気がしますが、やはり平安時代と北斎の絵のテイストのギャップは常に私たちの頭に違和感を訴え続けてきて、計画が途中で頓挫したのも仕方ないかな、という気がします。
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今回の呼び物の一つは国内の美術館が所蔵する肉筆画が十数点展示されていることです。
「墨堤三美人図」「白拍子図」など。蔦屋重三郎が版元の「画本狂歌 山満多山」には専用の絵入りの袋が展示されていて、当時の売り方も、今の特別描き下ろしケース入り豪華本、みたいなものだったのだろうと想像されました。