●2021年6月18日
六月大歌舞伎「桜姫東文章 下の巻」(歌舞伎座)
出演:片岡仁左衛門 片岡孝太郎 中村錦之助 中村歌六 坂東玉三郎
桜姫の下の巻。
桜姫とついに再会した清玄。桜姫をしつこくくどくうちに誤って自らの喉を刺して死んでしまいます。
権助により女郎屋に売られてしまう桜姫。しかし幽霊が憑いているといって権助の元に帰されてしまいます。酔った権助は、自分が桜姫の父親を殺し、家宝の都鳥の一巻を盗んだことを話してしまいます。それを聞いた桜姫は・・・。
上の巻ではあまりな展開に脳内ツッコミが忙しくて、なかなかお話を味わうところまで行きませんでしたが、今回はストーリー自体がいかにも歌舞伎らしい濃厚さなのに加えて、仁左衛門さん玉三郎さんの芸を堪能できました。
恋の妄執に憑かれた清玄と、悪の権化のような権助。この二人を仁左衛門さんが目まぐるしく演じ分けています。
玉三郎さんの桜姫は、最初はなよなよと成り行きに流されるだけだったのが、ぞんざいな女郎口調になり、真実に目覚めてからは悪を成敗して自らの矜持を取り戻すという、三段階の演じ分けが見事でした。
最後はハッピーエンド…というべきなんだろうなあ。桜姫のヒロイン物語にしては、途中までの桜姫の主体性のなさとか境遇の激変ぶりとかが、まさかここまでというような内容です。
さらに権助との間になしたからといって子を殺すのは現代のお話だったら考えられない展開ですが、そこはそれ今とは価値観が違う時代なんだなと思いました。