千両過眼

東京在住の会社員です。読書、舞台、展覧会の感想などを書いています。

京都

真如堂、毘沙門堂

 2017年11月
 
下鴨から真如堂へ。藤原詮子の離宮に阿弥陀像を安置したのが始まり。安倍晴明ゆかりの寺でもあります。
 
 
山門の前に大きな楓の木があります。
本堂や書院を拝観します。円山派の国井応祥や四条派の前川文嶺・孝嶺、鈴木松年の襖絵、江戸前期の僧・厭求の釈迦三尊像などを見ました。
庭だけでなくお堂の中を見られると、そのお寺の個性がよく理解できる気がします。
 
 
翌日は、東西線で山科に向かいました。
先日、ここに伝来したという「毘沙門堂」という井戸茶碗を見たので、縁を感じ行ってみたのでした。
山科駅から、住宅地を抜けていきます。
向こうに見える山が「錦繍」という感じに彩られていて、こういう景色ってあんまり見たことがなかったので嬉しかったです。
石段を上り仁王門をくぐって、本堂や宸殿を拝観。
狩野永淑主信作の天井竜、狩野益信の多数の襖絵、円山応挙の杉板戸の衝立がありました。
益信にはこちらが動くと机の形が変わる逆遠近法の絵も。応挙のは視線の動きに沿ってシルエットが変わる鯉の絵。
トリックアートに関心の深いお寺なのかも!
拝観中、空は晴れているのに、細かい雨が降ってきたり、突然強風が吹いたりしました。
境内のところどころで紅葉が真っ盛り。山里の風情あるお寺でした。

南禅寺、旧三井家下鴨別邸


2017年11月

好きな旅館にたまたま空きが出たと聞いて、京都に行きました。
11月の京都は何といっても紅葉!
今年は例年より早めということで気が揉めましたが、何とかぎりぎり間に合った感じです。

とりあえず行き慣れた場所ということで南禅寺へ。
これがすごい混雑で。
いつもがらんとしてる参道に大型バスが何台も停まり、山門の方へ向かう人混みは、まるで四条河原町のよう。 




まず天授庵へ。細川家ゆかりのお寺です。
方丈の横を回り込んでいくと、広大な池泉回遊式庭園が広がります。
池に沿って赤や黄色、さまざまな色の紅葉が見られました。
ここで印象的だったのは、侘びた風情ですね。
苔むしたつくばい。秋明菊の白い花があちこちに咲いていました。 




小雨の中、水路閣の向こうの石段を上り、南禅院へ。かつて亀山上皇の離宮があった場所だそうです。
ここも池泉回遊式庭園です。こんな高い場所にこういうところがあるのが不思議といえば不思議。水路閣、どこまで続くのかと思ってたら、端っこを初めて見ました。 




翌日は朝から下鴨にある旧三井家下鴨別邸を見学。
三井家の祖霊社が遷座された場所に、宿舎や茶室を新築したもので、戦後は家庭裁判所宿舎としても使用されたそうです。
あの広岡あさの書状なども展示してありました。
下の写真は、糺の森。
「石川や瀬見の小川の清ければ月も流れをたづねてぞすむ」の和歌で有名なせみの小川が流れています。

鴨川の鳥たち

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◇2017年2月26日
街の真ん中を川が流れているからか、京都は鳥の多いところです。
ちょっと鴨川べりに下りただけでも、トビ、シロサギ、アオサギや、カモの群れなどを目にしました。
川の中に立って、じっと物思いにふけっているように見える小鳥は、セグロセキレイでしょうか。
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私が泊まった旅館にはキジバトのつがいが棲んでいるのですが、一羽ずつ、久々に姿を見せました。
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石山寺

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○2016年10月
「石山寺」

京都から高速を通って大津へ行きました。
初めて近くで琵琶湖を見ました!(写真)。曇天なので向こうの方は霞んで見えない。でも感激!
有名な瀬田の唐橋の脇を通って、目的地の石山寺に向かいます。

このお寺はその名の通り、巨大な硅灰石の上に建っています。
至るところにむき出しになっている岩肌や湧水らしい池が、プリミティブな信仰の形を感じさせます。
以前見た石山寺縁起で、池から龍神が顕現する絵があったのを思い出しました。

本堂へは、いかにも山に上っていく感じで、石段を登っていきます。
あれは青岸渡寺の記事でだったか、白洲正子さんが書いていたように、この自分の足で登っていく、という感じは重要かも。
33年に一度開帳の勅封秘仏、二臂の如意輪観音像が本堂の本尊で、今年はその開扉の年に当たります。
何より、本尊のすぐ側まで近付くことができるのに驚きました。間近で見上げると、大きい!
岩盤の上の蓮華台に座っていて、衣文の裾には金箔や銀箔、朱色の彩色の痕。
平安後期の作で穏やかなお顔です。
脇侍は執金剛神と蔵王権現。天平期の初代本尊の断片や、初代本尊に納められていたという胎内仏も展示されています。

本堂を出て石段を上がると多宝塔があります。
中を覗くと、宝冠を被り、智拳印を結んだ本尊、快慶作の金剛界大日如来坐像が見えています。
見れば見るほど端正な姿。薄暗がりの中、玉眼でじいっとこちらを見詰めているようです。
さらに上がった月見亭からは、琵琶湖が遠望できました。この月見亭は、後白河上皇の行幸に際して建てられたものだそうです。

清凉寺

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○2016年10月
「清凉寺」

京都・嵯峨の清凉寺に行きました。
途中、車は広沢の池のほとりを進みます。この辺りは郊外らしい田園風景が広がっています。
王朝時代、都びとの通ったという「千世の古道」もこの辺りだったのかなと思いました。

清凉寺は、通称「嵯峨の釈迦堂」と呼ばれる古刹。古来から多くの信仰を集めた三国伝来、生身(しょうしん)の釈迦如来立像が本尊です。
釈迦自ら開眼したという仏像が中国に伝えられ、宋時代に模刻されてはるばる日本に請来されたとのことで、なるほどインド的というか、日本の仏像とお顔が違っています。
胎内に、絹の五臓六腑や経巻など多数の納入品が入っていたことは、発見当時多くの人を驚かせたことと思います。
この釈迦如来像のいわれを若いお坊さんが語ってくれたのですが、釈迦の生きた時代と現代が、信仰を通して繋がっているのが実感されました。

霊宝館では秋の特別公開をやっていました。
もともとは源融の別荘が、その死後に棲霞寺となったのが発祥で、旧棲霞寺本尊の阿弥陀如来像と両脇侍を始めとした平安時代の仏像が見られます。
狭い二階建ての、高床式の蔵みたいなところに、文殊・普賢菩薩像、四天王立像、兜跋毘沙門天像や十大弟子像、十六羅漢図(模写)、狩野探幽の花鳥図などが所狭しと並んでいます。
仏像はやはりお堂の中にあるのが一番ですが、大寺院のぴかぴかの宝物館と違い、こういう、ひっそりと古寂びた感じのところで間近く見るのも、独特の趣がありました。
短い時間でしたが、六臂の如意輪観音像の美しさに癒されました。

平等院鳳凰堂、鳳翔館

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○2016年10月
「平等院鳳凰堂、鳳翔館」

機会があって、平等院鳳凰堂を夜間拝観しました。
門内に入り、灯火もない闇の中を懐中電灯片手にとぼとぼ歩きます。間近で突然ギャアッとけたたましい叫び声。ぎょっとしていると、ガイドさんが「ああ、鷺ですね」。
阿字池をぐるっと回り込むと、鳳凰堂の正面に出ます。どこからか楽の音が聞こえます。

平成修理の時に丹塗りになったので外観の印象は大分変わりましたが、夜の鳳凰堂というのは一種独特の雰囲気です。
なんか、この世の風景とは思えない、事前に住職から日想観のことを聴いていたためかも知れませんが。
池を挟んだ鳳凰堂内部に、定朝作、平安後期の阿弥陀如来坐像が見えています。

最近、美術ブームといいますが、お寺や仏像については信仰の形を理解しないと、ただ見るだけに終わってしまいそうです。
2001年オープンの鳳翔館は私は初めてでした。
館内外ともシャープなデザインで、お寺の宝物館という感じがしません。
飛天の描かれた梵鐘、初代鳳凰一対、鳳凰堂の長押に架かっていない雲中供養菩薩像の半分、扉絵のレプリカなどが保管・展示されています。
雲中供養菩薩像は、横向きで片手を前に出している有名な像(北10号)を一番上に正面奥壁面、またケース内に展示。一体ずつ見たかったのですが、時間の関係で見られなくて残念でした。

売店横のスペースでいちひめ雅楽会による雅楽・舞楽がありました。
雲中供養菩薩像が抱えているような楽器を、現代の楽人たちが演奏します。さっき聞こえていたのはこれだったのだな。
私は音曲についてさっぱりですが、西洋音楽と違い、ぽわーんと平板な感じで続いていく音色が、時間が止まっているような感覚でした。
10月でしたが、京都は夜になると冷えました。初めて生で「蘭陵王」を観ることができて嬉しかったです。

源氏物語ミュージアム

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○2016年10月30日

1か月ぶりの京都です。
いつもほぼ京都市内をうろうろするだけで終わってしまうのですが、今回は宇治や大津まで足を伸ばしました。
宇治の源氏物語ミュージアムにも、初めて行きました。
入口にムラサキシキブが実をつけています。
ミュージアムの感想をひとことで言うと、・・・詰まらなかったです。
そもそもが源氏物語は架空の物語なんだから仕方ないけれど、展示してあるのは「源氏」の場面の再現人形や、着せ綿とか貝合せ、牛車や装束など、当時の遊びや風習に関する資料ばかり。
香木が展示されていて、穴から香りを聞くことができるようになってるものの、ほとんど何の香りもしない・・・。
シアターの上映は「橋姫」という題名で宇治十帖をまとめたもので、なんかおどろおどろしい。
企画展は「源氏物語の音楽」。湖月抄の版本などが展示されています。笙や篳篥の実物を見られたのが良かったです。

これは宇治全体にいえるのですが、源氏物語で町おこししようという気が満々で少々引いてしまいます。
宇治は橋姫伝説や中世の合戦の舞台でもあるし、歌枕、大和絵の画題にもなっていますよね。
ミュージアムよりも、車中から見える宇治川の流れとか、道の途中に突然現れるお寺や神社、そして宇治上神社の緑に包まれた佇まいの方がよほど昔をしのばせると思いました。

「聚光院 特別公開」

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○2016年9月10日
「創建450年記念 聚光院特別公開」

JR東海の「そうだ京都は、今だ」のキャンペーンCMが流れていますが、狩野永徳の障壁画がいま大徳寺聚光院に里帰りして公開されているので、見に行きました。
北大路駅からバスで大徳寺へ。
9月といえど京都は暑い。加えてお寺は、街中より確実に2、3度は高い気が。庭園に面した方丈にさんさんと日が当たる上、当然冷房もなく、熱中症の恐怖も感じました。
瑞峯院、興臨院を拝観し、金毛閣や法堂を横目にしながら歩きます。真っ直ぐ伸びていく道沿いに松の木がわずかな影を落とします。
予約していた時刻に聚光院に着きました。

聚光院は三好長慶の菩提寺として建立、千利休の菩提所でもあるところから、茶道に関係の深いお寺です。
30名位ずつ案内の方の後ろに付いて説明を聞きます。
庭園は百積の庭といわれる苔庭。創建当時は枯山水庭園だったそうです。利休お手植えから3代目の沙羅の木があります。
今回公開の障壁画は、
①松栄「瀟湘八景図」(礼之間)
②松栄「蓮池藻魚図」(仏間)、永徳「花鳥図」(室中之間)
③永徳「琴棋書画図」(檀那之間)
④松栄「竹虎遊猿図」(衣鉢之間)
⑤雲谷派「山水図」(大書院之間)
の順に鑑賞。
「花鳥図」は以前、東京国立博物館の国宝展で一部が展示されているのを見ました。16面揃っては勿論初めて。
のたくったような木の幹や、これでもかというように伸びていく枝が横に展開するのは永徳ならでは。けれど豪快さにもまして優美さを感じさせるのも、やはり永徳。
右奥から流れ出るせせらぎが室中に注ぎ込む感じや、2羽の鶺鴒の配置から、本来平面のはずの襖を3面の立体空間に見立てた意図が分かります。枯山水の庭にこの絵が向かい合っていたのも偶然ではないんでしょうね。
両隣の部屋の「瀟湘八景図」「琴棋書画図」が水辺の風景で、やはり庭と一体の構想から来ていると考えられます。
室中之間の正面襖が開けられた向うの内陣には、松栄「蓮池藻魚図」の小襖が見えていて、こちらは水の下の世界を表現しているようです。
こういうことも、もともとあるべき場所で見るからこそ感じられることで、美術館ではどう頑張ってもこうはいかないことを考えると、今回の里帰りみたいな機会は本当に貴重だと思いました。

続いて茶室「閑隠席」(表千家7代如心斎が寄進)、「枡床席」(閑隠席の70年後に、水屋を挟んで作られ、枡床や貴人口がある)を拝見。
閑隠席の井戸の滑車は珍しい織部焼だということでした。
最後に、2013年の書院落慶時に奉納の千住博の障壁画「滝」。鮮やかな彩色。これが古いお寺に合うかどうかは、それぞれの主観によると思いますが。
この絵を描くのに、何度か描き直しをしたそうです。
岩を描こうとしたが、永徳と勝負しているようだからと破棄し、黒の彩色にしようとしたら、家元のお着物と被るのでこれも破棄し、としているうちに、アースカラーの滝になったのだそうです。
男性の多い上座の正客側がブルー基調、女性の多い下手側が白基調で、それぞれ着物に映える色になったとか。
説明は30~40分ぐらい。帰る頃には日もやや翳り、涼しい風が吹き抜けました。いつか、月釜の時にでも大徳寺に来てみたいです。604ce3bd.jpg
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