千両過眼

東京在住の会社員です。読書、舞台、展覧会の感想などを書いています。

北村 薫

「中野のお父さん」

1b05c9dd.jpg
◆2015年11月2日
「中野のお父さん」(文藝春秋)
北村薫

出版社に勤める田川美希が出会う「日常の謎」、これを高校教師の父が解決する、という話。
文学書に応募した原稿が1年後に出現する謎、先輩作家への謎のラブレター、志賀直哉と尾崎一雄の献本をめぐる謎など。
たいがいの謎には大して関心も持てませんでしたが、こんな物知りのお父さんがいるといいなとは思いました。
その中で、『文七元結』に引用されている其角の句
「闇の世は吉原ばかり月夜かな」
の解釈をめぐる謎は面白かったです。「闇の世は」で切るのと「吉原ばかり」で切るのと、意味が逆になるという。
日本語の曖昧性、これが時代と目的によって勝手にアレンジされていくのが興味深いです。
これとは別に「闇の世に」というバージョンが、『助六』の揚巻の出のところにあるというので、今度見たときに確認しようと思いました。
(2015年-42冊目)

「飲めば都」

DSC_0215.jpg◆2011年8月14日
「飲めば都」(新潮社)
北村 薫

私的には、久し振りの北村薫作品です。
主人公の小酒井都さんは、ある出版社に勤める若手編集者。才色兼備のOLですが酒の上の失敗には事欠きません。たとえば一緒にいた上司の服にワインをぶちまけたりなどは序の口です。
彼女の周りの人たちも、男女問わずいずれもその道の猛者揃い。
本書は、そんな彼らの“飲酒ライフ”を描いています。

私自身は全くいける口ではありませんが、時たま酒席に連なったりしていると、本当にお酒というのは、人それぞれだと思わせます。
たまにお酒を飲んで全然別人のようになってしまう人もおりますね(笑)
私が驚いたのは、新入社員の頃、ランチ時に上司や先輩社員たちがごくごく当たり前にビールを注文することでした。学生と社会人の違いに衝撃を受けたものです。

学生時代の都が、友人たちとの別荘滞在の最後の晩に、まだ残っていたお酒を「少し、胃に移しておこうか」と思うのが、いかにも“酒飲みの理屈”です。
まあお酒のことはともかく、出版界のお仕事の一端が垣間見えて、楽しく読める本です。(2011年-81冊目)

記事検索
最新コメント
アーカイブ
  • ライブドアブログ