◆2015年11月2日
「中野のお父さん」(文藝春秋)
北村薫
出版社に勤める田川美希が出会う「日常の謎」、これを高校教師の父が解決する、という話。
文学書に応募した原稿が1年後に出現する謎、先輩作家への謎のラブレター、志賀直哉と尾崎一雄の献本をめぐる謎など。
たいがいの謎には大して関心も持てませんでしたが、こんな物知りのお父さんがいるといいなとは思いました。
その中で、『文七元結』に引用されている其角の句
「闇の世は吉原ばかり月夜かな」
の解釈をめぐる謎は面白かったです。「闇の世は」で切るのと「吉原ばかり」で切るのと、意味が逆になるという。
日本語の曖昧性、これが時代と目的によって勝手にアレンジされていくのが興味深いです。
これとは別に「闇の世に」というバージョンが、『助六』の揚巻の出のところにあるというので、今度見たときに確認しようと思いました。
(2015年-42冊目)